※ 編集方針と主要記事の選定基準
本レポートの「主要ニュース(Top Stories)」は、編集部の主観を排し、世界中の宇宙関連ニュースから「同一テーマを扱った類似記事の件数」を独自集計し、客観的な基準で選定している。複数のメディアや機関が同時期に報じた事象は、業界全体に与えるインパクトが大きく、重要度が高いと判断するためである。

■ Weekly Summary(今週のサマリ)

今週(2/28〜3/6)は、民間宇宙ステーション競争の本格化と、アルテミス計画の再編継続、そして英国・欧州の宇宙産業投資の加速が際立った週となった。

最大の注目は、民間宇宙ステーションのVastが5億ドルを調達しHavenシリーズの開発・量産を加速(20件)したことだ。ポストISS時代の商用ステーション競争が資金調達フェーズに本格突入したことを示す今週最大のニュースとなった。また、AeroVironment株が宇宙軍のサプライヤー多角化の動きを受け17%急落(14件)し、宇宙防衛調達戦略の変化が市場にも波及していることが示された。

有人宇宙では、NASAがアルテミスIIIの有人月面着陸の見送りを検討(11件)していることが報じられ、先週の延期発表に続き月面着陸計画の抜本的見直しが浮上した。日本では初の新型補給機「HTV-X」がISSから離脱し軌道上での長期実験を開始(7件)し、日本の宇宙インフラ技術の存在感を示した。


■ Data Dashboard(今週の統計データ)

今週収集された宇宙産業ニュース(総計170件)の構成は以下の通り。

◆ カテゴリ別 記事件数

  • 企業動向・資金調達:24件
  • 政策・予算:20件
  • 輸送・打上げ・ロケット:18件
  • 防衛・安全保障:17件
  • 地上インフラ:13件
  • 有人輸送:8件
  • 探査・惑星開発:7件
  • その他衛星・関連サービス:7件
  • 通信・放送-衛星・関連サービス:6件
  • 軌道上サービス:6件
  • その他(地球観測・電子部品・衛星開発 等):44件
◆ 国・地域別 記事件数

  • 米国(共同事業含む):約88件
  • 英国:19件
  • 日本:14件
  • インド:約11件
  • 欧州全域:10件
  • フランス:8件
  • ドイツ:8件
  • スペイン:7件
  • オーストラリア(共同事業含む):約7件
  • その他(韓国・シンガポール・カナダ 等):約18件

■ Top Stories(主要ニュース)

1. 民間宇宙ステーションのVast、5億ドルを調達——HavenシリーズのISSポスト時代を先取り

【同一テーマ記事:20件】

民間宇宙ステーション開発のVast Spaceが5億ドルの大型資金調達を完了した。2027年の打ち上げを目指すHaven-1モジュールを皮切りに、本格的な商用宇宙ステーション「Haven-2」の開発・量産を加速させる。ISS退役後の軌道上居住インフラを民間が主導するポストISS時代の到来を象徴するニュースとして、今週最多の報道件数を集めた。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8203/

2. AeroVironment株が17%急落——宇宙軍のサプライヤー多角化の動きを市場が警戒

【同一テーマ記事:14件】

米国防・宇宙企業AeroVironment株が一日で17%急落した。米宇宙軍が特定サプライヤーへの依存を減らすべくアンテナシステムの調達先を多角化する方針を示したことが引き金となった。Vulcan Centaurの停止など宇宙軍調達戦略の見直しが続く中、個別企業の株価にまで影響が波及した。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8214/

3. NASAがアルテミスIII計画を見直し——有人月面着陸の見送りを検討か

【同一テーマ記事:11件】

NASAがアルテミスIII(初の有人月面着陸ミッション)の計画を見直し、着陸を見送る選択肢を検討していると報じられた。先週の工程表改定に続く動きで、SLSとオリオン宇宙船の技術的課題に加え、予算制約が意思決定に影響していると見られる。月面着陸の実現がさらに遠のく可能性が浮上した。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8189/

4. NASAがアルテミスIIのリアルタイム監視サイトを一般公開——月周回ミッションへの注目を喚起

【同一テーマ記事:10件】

NASAがアルテミスII有人月周回ミッションの飛行状況をリアルタイムで追跡できる一般公開型の監視サイトを発表した。打ち上げへの市民参加意識を高めるとともに、NASAの透明性と広報戦略の一環として機能する。アルテミスIIIの見送り検討と同時期の発表であり、月探査への関心維持を狙う戦略的なタイミングとも読める。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8202/

5. 日本初の新型補給機「HTV-X」、ISSから離脱——軌道上での長期実験を開始

【同一テーマ記事:7件】

JAXAが開発した日本初の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X(こうのとり後継機)」がISSからの離脱に成功し、引き続き軌道上での長期実証実験フェーズに移行した。従来のHTVを大幅に発展させた機体で、将来の軌道上サービスや月・深宇宙輸送への展開を見据えた技術実証を担う。日本の宇宙輸送能力の進化を示す節目となった。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8186/

6. ナイジェリア、国家宇宙資産の維持管理に向けた緊急資金を承認——アフリカの宇宙自立へ

【同一テーマ記事:8件】

ナイジェリア政府が既存の国家宇宙資産(衛星・地上局)の維持管理に充てる緊急資金の拠出を承認した。宇宙インフラの老朽化と維持管理費不足が問題化する中、宇宙開発を継続する意思を示した形だ。サハラ以南アフリカの有力な宇宙開発国として、ナイジェリアの動向は大陸全体の宇宙政策の方向性にも影響を与える。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8209/

7. Sierra Space等が新成長資金を確保——民間宇宙ステーション競争が資金調達フェーズへ

【同一テーマ記事:8件】

Sierra SpaceをはじめとするISS後継を狙う複数の民間宇宙ステーション事業者が、相次いで新たな成長資金の確保に成功した。Vast(5億ドル)と合わせて、今週だけで複数の民間宇宙ステーション関連企業への資金流入が確認されたことは、市場参加者のポストISS期待感の高まりを示している。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8225/

8. 中国軍、宇宙戦用ロボットや軍事用AIの人型ロボットを開発中

【同一テーマ記事:6件】

中国人民解放軍が宇宙空間での運用を想定した自律型ロボットや、軍事任務向けのAI搭載人型ロボットの開発を進めていると報じられた。軌道上での衛星攻撃・修復や地上での軍事支援への活用が想定されており、宇宙・陸上両領域におけるロボット化・AI化の軍拡競争が加速していることを示す。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8205/

9. 英国、国内宇宙産業に5億ポンドを投入——産業基盤の抜本的強化へ

【同一テーマ記事:5件】

英国政府が国内宇宙産業への5億ポンドの大型投資を発表した。製造・打ち上げ・通信・地球観測にわたる幅広い分野のサプライチェーン強化と雇用創出を目指す。欧州の中でも英国が宇宙産業への財政コミットメントを鮮明にした一週間となり、EU離脱後の独自宇宙戦略の具体化として注目される。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8215/

10. スペインPLD Space、1.8億ユーロを調達——三菱電機との提携でロケット量産を加速

【同一テーマ記事:5件】

スペインのマイクロロケット開発企業PLD Spaceが1.8億ユーロの大型調達を完了した。注目すべきは三菱電機との戦略的提携で、量産体制の構築に向けた日欧宇宙産業の連携深化を示す。欧州の独立した打ち上げ能力確保という観点からも、今回の大型調達が持つ意義は大きい。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/8191/


■ Sector & Regional Deep Dive(カテゴリ別動向)

【有人宇宙・探査 | ポストISS競争の本格化とアルテミス計画の岐路】

Vast(20件)、Sierra Space(8件)、Starlab(民間ステーション「Starlab」が早期顧客の獲得に成功・4件)Voyager(Starlabの商用化へ前進・2件)と、今週だけで複数の民間ステーション事業者が資金・顧客獲得で前進した。これに対しNASAはアルテミスIIIの見送り検討(11件)という苦しい判断を迫られており、ケネディ宇宙センターのML-2発射台プロジェクトを完全シャットダウン(2件)するなど縮小の動きも出ている。官から民へのバトンタッチが加速する構図が今週ほど鮮明になった週はなかった。

【企業動向・資金調達 | 欧州・日本連携と大型調達の連鎖】

PLD Spaceと三菱電機の提携(5件)は日欧宇宙産業の新たな連携軸を示す。欧州ではInfinite Orbitsが英Lúnasaを買収し英国市場への参入と軌道上サービスを拡大(5件)Thalesの2025年度売上高が防衛・宇宙の受注好調で前年比増の221億ユーロ(5件)となった。推進系ではENPULSIONが2,250万ユーロを調達し米国市場での生産を本格化(3件)している。

【防衛・安全保障 | 宇宙軍調達再編と中国の軍事宇宙化】

AeroVironment株急落(14件)と米宇宙軍によるULAヴァルカンの運用一時停止継続(5件)は、米国の国家安全保障打ち上げ体制の再編が市場に波及していることを示す。ノースロップ・グラマンへのDARC第2拠点発注でGEO監視能力を拡大(5件)し、対イラン「Operation Epic Fury」でレーザー・衛星・サイバーの複合ハイテク戦の内幕(4件)が報じられた。「コブラ・ゴールド」演習では宇宙・サイバー部隊による仮想戦を実施(4件)するなど、宇宙の軍事活用が実戦演習レベルにまで具体化している。

【輸送・打上げ・ロケット | 再利用競争と次回スターシップへの期待】

ロケット・ラボが通算83回目の打ち上げに成功し高頻度運用で商業・防衛需要に応える(4件)スターシップ「Flight 12」へのカウントダウンとしてShip 39が飛行前テストを開始(2件)しており、次回打ち上げへの期待が高まっている。中国では再利用型ロケット「力箭2号」が今月打ち上げへ(2件)と、SpaceXとの再利用競争が激化している。

【地上インフラ・施設 | 英国の研究拠点整備と欧州の再突入インフラ】

英国が初の国立微小重力研究センター(NMRC)を完工し宇宙製造の地上拠点が本格稼働(5件)した。欧州ではポルトガルが欧州初の宇宙再突入ライセンスを発行しアゾレス宇宙港が帰還拠点に(2件)なるなど、欧州全域で宇宙インフラの多角化が進んでいる。KratosがSSCのLEOミッション向けにOpenSpaceプラットフォームを提供(3件)し、地上局の標準化・効率化も加速している。またナミビア科学技術大学がナノ衛星地上局を開設しアフリカの宇宙開発能力を強化(2件)するなど、新興国の宇宙インフラ整備も続いている。

【政策・予算 | 英国の大型投資と米宇宙軍の人員・研究強化】

英国の5億ポンド宇宙産業投資(5件)は今週の欧州政策面での最大トピックだ。英国が宇宙製造医薬品の規制枠組みを策定し実用化への道を拓いた(2件)ことも、宇宙産業の多様化という観点で注目される。米国ではライス大学が米宇宙軍の「戦略的技術研究所4」の主導校に選定(2件)され、米宇宙軍がグローバルな脅威増大を受け人員増強と訓練拡充を提言(2件)するなど、学術・人的両面での安全保障強化が進んでいる。

【日本 | HTV-X離脱・PLD Spaceとの連携・防衛分野での存在感】

HTV-Xの軌道上実証移行(7件)は日本の宇宙輸送技術の新章を開く出来事だ。PLD Spaceとの三菱電機提携(5件)は日欧宇宙産業の新たな協力関係として注目される。ESAが推進剤不要のデブリ除去技術「ECO-Tethers」の研究を開始しフランス・日本が関与(2件)するなど、国際的な宇宙環境維持の取り組みにも日本の存在感が見える。