分析概要と集計方法
本レポートは、Astronaviが収録した2025年10月26日から12月19日までに世界で発信された宇宙産業・宇宙技術関連の公式リリースおよびニュース計1,338件を対象に、主体国・地域別の件数分布を整理・分析したものである。
本集計における「主体国・地域」は、当該ニュースの主導主体、発信元、もしくは政策・事業の中核となる国・地域を基準として分類している。
なお、以下の点に留意されたい。
・**「欧州全域」は、ESA(欧州宇宙機関)をはじめ、複数の欧州諸国が関与する制度・計画・共同プロジェクトを「欧州全体の動き」として集計している。
・そのため、欧州全域と個別国(英国、ドイツ等)はダブルカウントとなる。
・「その他 欧州」**は、本集計で個別に区分していない欧州諸国の件数合計である。
本レポートにおける件数は、活動量や発信頻度の指標であり、各国の市場規模や技術力そのものを直接比較するものではない。
ただし、政策決定、事業進展、技術実証がどの地域で高頻度に発信されているかを把握する上では、有効な動向指標といえる。
国・地域別動向分析
1. 米国(556件)
多層化した宇宙エコシステムと圧倒的な発信量
米国は556件と全体の約4割を占め、他国を大きく引き離している。
この件数の多さは、単一分野への集中ではなく、輸送、防衛・安全保障、商業利用、先端技術といった複数レイヤーで同時に活動が進んでいることを反映している。
輸送分野では、打上げの高頻度化や次世代大型輸送システムの開発、商用宇宙ステーション(軌道上拠点)構想など、民間主導の取り組みが継続的に報じられている。
防衛・安全保障分野では、米宇宙軍(USSF)を中心に、即応型宇宙(TacRS)や宇宙ドメイン認識(SDA)に関連する契約・実証・制度整備が定常的に発信されている。
また、AI、光通信、耐放射線半導体など、地上IT技術を宇宙用途へ統合する動きも活発であり、「宇宙×テクノロジー」領域の拡張が米国の発信量を支えている。
2. 欧州(欧州全域・英国・その他欧州を含む)
制度主導と地域連携による持続的な宇宙活動
欧州関連の記事は、
・欧州全域:63件
・英国:74件
・その他 欧州:83件
となっており、合計すると220件に達する。
欧州の特徴は、単一国家ではなく制度・連合として宇宙活動を推進する構造にある。
欧州全域としては、ESAを中心とした共同プロジェクト、気候変動観測、セキュリティ、宇宙インフラ整備など、複数国が関与する案件が継続的に発信されている。
輸送分野では、アリアン6の運用定着に向けた打上げ計画の具体化が進み、欧州としての自律的宇宙アクセス確保が重要テーマとなっている。
また、IRIS²に代表される衛星コンステレーション計画は、制度設計・産業育成・安全保障を一体化した欧州独自のアプローチを示している。
3. インド(100件)
国家主導の成果と商業化フェーズへの移行
インドは100件と、英国や中国を上回る発信量を記録した。
この背景には、国家宇宙計画における具体的成果と、商業化を見据えた制度・市場整備が同時に進展している点がある。
輸送分野では、LVM3による大型通信衛星の打上げ成功が報じられ、4トン級以上の衛星を自国ロケットで運用できる能力を改めて示した。
有人宇宙計画「ガガンヤーン」では、無人ミッション計画や半人型ロボット「Vyommitra」に関する情報発信が相次ぎ、国内外の関心を集めた。
さらに、政府主導による宇宙関連基金の設立や、スタートアップによる小型ロケット・衛星開発の進展など、国家主導から商業市場形成へ向かう過渡期を反映したニュースが増加している。
4. 中国(70件)
独自技術体系の継続と商業領域の拡張
中国は70件と、一定の安定した発信量を維持している。
国家プロジェクトでは、宇宙ステーション「天宮」の運用や月探査計画など、長期ロードマップに基づく発表が中心である。
一方で、民間ロケット企業による再使用技術や打上げ能力向上に関する報道も増えており、国家主導と商業領域の並行発展という中国独自の構造が反映されている。
5. 日本(52件)
実証・要素技術を軸とした発信と、輸送基盤の課題
日本は52件と中位に位置するが、内容面では実証型ミッションや要素技術の開発・検証に関する発信が中心となっている。
輸送分野では、H3ロケットを軸とした打上げ体制の確立に向けた取り組みが継続的に報じられた一方、12月22日の8号機打上げ失敗により、輸送基盤の安定性確保が引き続き課題であることが改めて示された。
これにより、日本の打上げ分野は「運用定着」という段階には至らず、技術検証と信頼性向上の局面にあると位置付けられる。
一方で、光通信、デブリ除去、探査関連技術など、大学・研究機関・企業が連携した要素技術の実証に関する発信は一定量を維持している。
民間分野では、宇宙スタートアップによるミッション進捗や、大手企業による宇宙ビジネス参入に関するリリースが散発的に確認され、中長期的な産業基盤形成を意識した動きが続いている。
総括(修正版)
2025年10月下旬から12月中旬にかけてのAstronavi収録データからは、以下の構図が浮かび上がる。
・米国:多層的エコシステムによる圧倒的な情報発信と実装密度
・欧州:制度と多国連携を軸とした持続的な宇宙活動
・インド:国家プロジェクトの成果と商業化フェーズの同時進行
・中国:独自路線を維持しつつ商業領域を拡張
・日本:実証・要素技術を重視する一方、輸送基盤の信頼性確立が継続課題
