※ 編集方針と主要記事の選定基準
本レポートの「主要ニュース(Top Stories)」は、編集部の主観を排し、世界中の宇宙関連ニュースから「同一テーマを扱った類似記事の件数」を独自集計し、客観的な基準で選定している。複数のメディアや機関が同時期に報じた事象は、業界全体に与えるインパクトが大きく、重要度が高いと判断するためである。

■ Weekly Summary(今週のサマリ)

今週(3/14〜3/20)は、NVIDIAによる宇宙専用AIプラットフォームの衝撃的な発表と、アルテミスIIロケットの発射台到着、そして軌道上データセンター構想の競争激化が際立った一週間となった。

最大の注目は、NVIDIAが宇宙放射線耐性を備えた宇宙専用AIコンピューティングプラットフォームを正式発表(52件)したことだ。衛星上でリアルタイムにAI推論を実行し地上への送信帯域を大幅削減するこの発表は、今週だけで52件もの報道を集め、宇宙産業における最大のニュースとなった。同時期にBlue Originが最大5万1,600機による軌道上データセンター計画「Project Sunrise」を公表(8件)するなど、軌道上AIコンピューティングをめぐる競争が一気に加速した。

有人宇宙では、アルテミスIIのSLSロケットが39B発射台に到着し4月打ち上げの最終段階へ(11件)進んだ。防衛・政策面では米「Golden Dome」ミサイル防衛構想の総工費が1,850億ドルに上方修正(10件)され、宇宙防衛インフラへの投資規模の大きさが改めて示された。


■ Data Dashboard(今週の統計データ)

今週収集された宇宙産業ニュース(総計145件)の構成は以下の通り。

◆ カテゴリ別 記事件数

  • 政策・予算:22件
  • 輸送・打上げ・ロケット:19件
  • 企業動向・資金調達:14件
  • AI・エッジコンピューティング:9件
  • 地上インフラ:9件
  • 探査・惑星開発:8件
  • 防衛・安全保障:7件
  • 衛星開発・製造:7件
  • 通信・放送-衛星・関連サービス:6件
  • その他(地球観測・燃料・電力 等):44件
◆ 国・地域別 記事件数

  • 米国(共同事業含む):約57件
  • 日本:20件
  • カナダ:9件
  • インド:8件
  • 中国:6件
  • 欧州全域:5件
  • 英国・ドイツ(共同含む):約5件
  • 韓国:2件
  • その他(オーストラリア・スウェーデン・フィンランド 等):約33件

■ Top Stories(主要ニュース)

1. NVIDIAが宇宙専用AIコンピューティングプラットフォームを発表——AIを軌道へ

【同一テーマ記事:52件】

NVIDIAが宇宙放射線への耐性を備えた衛星搭載専用の高性能AIコンピューティングプラットフォームを正式発表した。衛星上でリアルタイムにAI推論を実行できるため、地上への送信帯域を大幅に削減できる。自律的な障害物回避や地球観測データの自動選別といった高度な処理を軌道上で直接実行することが可能となり、宇宙AI時代の到来を強く印象づける発表として今週最多の52件を集めた。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0556/

2. アルテミスIIのSLSロケットが発射台に到着——4月打ち上げに向け最終段階へ

【同一テーマ記事:11件】

NASAのArtemis II有人月周回ミッションのSLSロケットとOrion宇宙船がケネディ宇宙センター39B発射台へのロールアウトを完了した。組立棟(VAB)から約6.4kmを11時間かけて移動し、3月20日に据え付けが完了。強風による数時間の遅延はあったものの予定通りに発射台設置を達成した。先週のFRR通過(Vol.20)に続く大きな前進で、4月1日打ち上げへのカウントダウンが本格化した。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0444/

3. 米ミサイル防衛構想「Golden Dome」の総工費が1,850億ドルに上方修正

【同一テーマ記事:10件】

国防総省が全米ミサイル防衛シールド「Golden Dome」の推定コストを100億ドル増額し約1,850億ドル(約28兆円)に上方修正した。増額分は宇宙ベースのセンサー・追跡能力・データ輸送レイヤーの開発・配備を前倒しで加速させるためで、宇宙軍のゲトライン将軍は極超音速ミサイルや弾道ミサイルを軌道上から検知する重要性を強調した。宇宙防衛インフラへの投資規模の大きさが改めて鮮明になった。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0802/

4. Blue Origin、最大5万1,600機の軌道上データセンター計画「Project Sunrise」を公表

【同一テーマ記事:8件】

Blue OriginがFCCに、最大5万1,600機の衛星で構成する軌道上計算基盤「Project Sunrise」の計画を提出した。AI需要の爆発的増加による地上データセンターの電力・冷却水不足を解消するため、高度500〜1,800kmの太陽同期軌道に衛星を配置し太陽光発電を主電源として利用する構想だ。衛星間はレーザー光通信で結び、同社の「TeraWave」を介して地上と接続する。NVIDIAの発表と同週に出た軌道上AIインフラ競争の象徴的ニュースとなった。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0481/

5. 韓国の研究チームが宇宙放射線耐性の次世代AIチップを検証——ニューロモーフィック技術が鍵

【同一テーマ記事:8件】

韓国の研究チームが、宇宙放射線環境下でも動作可能な次世代AIチップの検証に成功した。ニューロモーフィック(神経模倣型)構造を採用し、高エネルギー粒子によるデータ破壊や物理的損傷を模したシミュレーションを耐え抜いた。従来のメモリベースチップと比べ放射線耐性が高く消費電力も大幅削減できる。NVIDIAの宇宙専用プラットフォーム発表と並び、宇宙向けAI半導体の開発競争が世界規模で進んでいることを示す。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0307/

6. カナダ政府、自国の宇宙打ち上げ能力強化に約2億2,500万ドルを投資

【同一テーマ記事:7件】

カナダ政府が国内からの自律的なロケット打ち上げ能力確立のため約2億2,500万ドルの投資を発表した。資金は国内宇宙港建設・ロケット開発企業への助成・関連サプライチェーン整備に充てられる。同時期に自国射場の10年リース契約も締結(2件)しており、これまで米国の打ち上げ手段に依存してきたカナダが宇宙輸送の自立に向け本格的な政策転換を進めていることが示された。先週のMDA Space NYSE上場(Vol.20)とあわせ、カナダ宇宙産業の勢いが際立つ。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0240/

7. 米宇宙軍、GPS III衛星の打ち上げをULAからSpaceXへ変更

【同一テーマ記事:6件】

米宇宙軍がGPS III SV10衛星の打ち上げ機をULAのVulcanからSpaceXのFalcon 9に変更した。Vulcanロケットの異常調査が継続中であることを受けたリスク回避措置で、重要な国防資産のGPS衛星配備スケジュールを遅延させないための判断だ。先週のVulcan停止継続(Vol.20)に続く動きで、米国の国家安全保障打ち上げにおけるSpaceX依存がさらに高まることとなった。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0713/

8. MDA Space、カナダ国防省から宇宙監視システム「SOS 2」を受注

【同一テーマ記事:6件】

MDA Spaceがカナダ国防省から地球軌道上の人工物・スペースデブリを精密監視する「宇宙監視システムSOS 2」の構築を受注した。最新の光学センサーと自動解析ソフトウェアを統合し宇宙資産への脅威を早期検知する。先週のNYSE上場に続き、MDA Spaceは防衛・監視両面での存在感を一気に高めた週となった。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0762/

9. タミル・ナードゥ州政府、宇宙スタートアップAgnikul Cosmosに2.5億ルピーを出資

【同一テーマ記事:5件】

インドのタミル・ナードゥ州政府がChennaiを拠点とするAgnikul Cosmosに2億5,000万ルピー(約4.5億円)の直接出資を決定した。同社は3Dプリント技術を駆使した世界初の単一部品ロケットエンジンを開発し小型ロケットAgnibaanの運用を目指す。州政府による直接投資は、地域の宇宙産業クラスター強化とインド国内ディープテック・スタートアップ支援の象徴的な事例として注目された。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0648/

10. AstroscaleがデブリELSA-M打ち上げでIsar Aerospaceと契約——欧州初の商用デブリ除去へ

【同一テーマ記事:4件】

Astroscale UKがデブリ除去実証衛星ELSA-Mの打ち上げにドイツのIsar Aerospaceを選定した。単一のサービサー衛星で複数の故障衛星を捕獲・大気圏再突入させる技術の実証で、ノルウェーのAndøya Spaceportから軌道投入する計画。ELSA-Mは磁気ドッキングプレートを備えた衛星を安全に軌道外へ移動させる能力を検証する。同じく今週SaxaVord宇宙港がHyImpulseと打ち上げ契約を締結(3件)するなど、欧州の宇宙港・打ち上げエコシステムが急速に整備されている。

詳細記事はこちら ≫ https://astronavi.jp/news/26-11-0107/


■ Sector & Regional Deep Dive(カテゴリ別動向)

【AI・エッジコンピューティング | 軌道上AI競争が一気に加速】

NVIDIAの宇宙専用AIプラットフォーム(52件)とBlue OriginのProject Sunrise(8件)が同週に発表され、軌道上AIコンピューティングの競争が一気に加速した。8.8万機の衛星コンステレーションによる史上最大の宇宙データセンター構想(2件)も話題を集め、日本の超小型衛星「FUSION-1」がエッジAIとIoTを活用した自律観測に成功(2件)するなど、宇宙×AI分野の動きが全方位で活発化している。中国では宇宙からの指示で地上ヒューマノイドロボットを制御する実験(2件)を実施するなど、軌道上AIの応用が新次元に入りつつある。

【有人宇宙・探査 | アルテミスII発射台到着と月面長期構想】

SLSの39B発射台到着(11件)で4月打ち上げへの最終準備が整った一方、NASAがアルテミスIIの地上設備を再評価しスケジュール遅延を懸念(3件)する報道もあり、予断を許さない状況が続く。月面長期ビジョンではNASAがアルテミスV以降の「月タクシー」としてStarshipの活用を本格検討(2件)しており、民間宇宙船の月面輸送への統合が現実味を帯びてきた。

【政策・予算 | 防衛宇宙予算の膨張と調達改革】

Golden Domeの1,850億ドルへの上方修正(10件)はこの傾向の象徴だ。米宇宙軍が調達体制を刷新しミッション領域ごとに最適化されたPAEを導入(3件)し、米韓合同演習「Freedom Shield 26」で宇宙ドメイン統合演習を実施(3件)するなど、宇宙の実戦活用に向けた制度・演習両面の整備が進む。カナダは打ち上げ能力投資(7件)と自国射場10年リース締結(2件)で宇宙自立へ舵を切った。

【輸送・打上げ・ロケット | GPS打ち上げ変更と欧州打ち上げ拠点整備】

GPS打ち上げのULA→SpaceX変更(6件)はVulcan問題の余波が続いていることを示す。SpaceXが次世代Starship V3の初燃焼試験に成功(2件)し、Rocket Labが極超音速技術試験向けに1.9億ドルの大型契約を締結(2件)するなど、米国の打ち上げ能力はさらに強化されている。欧州ではAstroscale/Isar(4件)とSaxaVord/HyImpulse(3件)が打ち上げ契約を締結し、欧州独自の打ち上げエコシステム整備が加速している。

【企業動向・資金調達 | M&Aと地域政府投資の連鎖】

York Space SystemsがOrbionを買収し衛星推進系の垂直統合を強化(3件)し、先週に続きM&Aの波が続く。インドではAgnikul Cosmosへの州政府投資(5件)のほか、Samtel Avionicsが宇宙・ドローン分野に約36億円を投じ事業拡大(2件)するなど、インド宇宙産業への資本流入が多層的に続いている。

【軌道上サービス・デブリ除去 | 商用インフラ構築が本格化】

AstroscaleのELSA-M(4件)に加え、PortalとPaladinが提携し商用デブリ除去サービスのインフラ構築を開始(3件)するなど、軌道上持続可能性への取り組みが具体的なビジネスとして動き始めている。AAC Clyde Spaceが次世代気象衛星用マイクロ波放射計を約125億円で受注(3件)するなど、欧州の観測衛星インフラ整備も着実に進む。

【日本 | 光通信・SAR・エッジAIで技術力を発揮】

今週も日本関連ニュースが20件と活発だった。NECが光通信衛星コンステレーション実証機の機器設計を完了(3件)し、Synspectiveが8機目のSAR衛星StriX-3の軌道投入に成功(2件)した。超小型衛星FUSION-1のエッジAI自律観測成功(2件)PV EXPO 2026での宇宙グレード・ペロブスカイト太陽電池への注目(2件)など、ハード・ソフト両面で日本の宇宙技術の存在感が際立った週となった。

【燃料・電力 | 反射衛星による「夜間太陽光販売」構想が物議】

米Reflect Orbitalが宇宙に巨大な鏡を配置し夜間の地上に太陽光を反射・販売する計画を発表(3件)し、賛否両論を巻き起こした。太陽光発電の24時間化というメリットを掲げる一方、科学者・天文学者からは生態系・睡眠サイクル・天文観測への悪影響を懸念する声が噴出した。宇宙利用の拡大が地球環境に与える影響をめぐる議論として注目を集めた。