■ 宇宙産業の変化点に現れた“京セラらしさ”

衛星コンステレーションの量産フェーズ入り、光通信の本格導入、高温部材の国産化――。 宇宙機設計を巡る環境はこの数年で大きく変化している。 こうした潮流の中で京セラは、ファインセラミック事業本部(材料)・電子部品事業本部(各種電子部品)・半導体部品セラミック材料事業本部(パッケージ)の3軸で構成された出展を行い、 宇宙分野に向けて多層的に“効く”技術スタックを持つメーカーであることを示した。
その全体像を、展示ブースと実機サンプル、公開情報をもとに紐解いていく。


■ ファインセラミック事業本部:三本柱で宇宙用途を支える材料群

京セラのファインセラミック事業本部は今回、宇宙機が直面する ①光学精度 ②高温構造 という二つのコア領域に対して、特長の異なる素材を体系的に紹介した。


 ① ファインコージライト®

―― 光学ミラーとしてISSで実証された低熱膨張材

低熱膨張性と高剛性を両立したファインコージライト®は、京セラが長年開発を続けてきた光学・精密機器向け素材だ。 温度変動の大きい宇宙環境でも形状安定性を保ち、光学面の変形を最小限に抑える。 今回の出展では、ISSで実証実験が行われた光通信ミラーが注目を集めた。 小型光通信実験装置に採用された実績を持ち、宇宙用光通信端末・望遠鏡といった高精度光学系における適性を裏付けるものだ。


  ② 窒化ケイ素 SN282

―― 月着陸実証機「SLIM」スラスターに採用された高温構造材

宇宙分野における京セラ材料の象徴的な実績が、窒化ケイ素 SN282である。 JAXAの月面着陸実証機「SLIM」のスラスター部品に採用され、高温でも強度劣化しにくい特性を活かしてプロジェクトの成功に貢献した。
高温燃焼ガス・推進器の熱衝撃、打ち上げ時の振動など、宇宙用途特有の複合負荷をクリアした素材として、 今後はスラスター周辺だけでなく、月・惑星探査機の高温部品や高負荷構造材への展開も見込まれる。

軽量の低熱膨張ミラーと窒化ケイ素 SN282を使用した『SLIM』のスラスター。 宇宙光学・高熱負荷部材の双方をカバーする京セラの材料技術を示す

ファインコージライト®製ミラーの実物展示。 低熱膨張と高剛性により、ISS光通信実証用の光学ミラーとして採用された実績をもつ


■ 電子部品事業本部:米国航空宇宙分野で豊富な実績のある製品に加え、車載実績品を提案

電子部品事業本部は、
米国航空宇宙分野で豊富な実績のある製品

  • 水晶発振器(OCXO)
  • 各種コンデンサ
  • EMIフィルタ

車載実績品

  • 耐振動フローティングコネクタ

ディープスペース向け・ニュースペース向けと多様化する宇宙産業分野のニーズに、グループ会社の京セラAVX製品を含めた豊富なラインアップで対応する

● 北米大手への供給実績

京セラはすでに北米の宇宙関連企業へ電子部品を供給しており、部品調達側の要求に応えるかたちで実績を積み重ねている。

● 京セラAVXとの連携強化

さらに、京セラは米国企業のAVXを2020年に完全子会社とし、連携を強めてきた。
航空宇宙・防衛分野にアクセス可能な供給ネットワークを保有している。
EC部門の宇宙展開は、この国際的なバックボーンに支えられている点も重要だ。


セラミックコンデンサ、ポリマーコンデンサ、EMIフィルタの展示パネル。
米国航空宇宙分野での採用実績をもつ京セラAVX製品



合成水晶インゴットと高信頼コンデンサのサンプル。 衛星用OCXO/TCXOの周辺材料として世界的に利用される基礎部材群



京セラAVXの高信頼電子部品群。
OCXO、リファレンスオシレータ、EMIフィルタなどの宇宙用途向け部品を展示。


■ 半導体部品セラミック材料事業本部:光通信向けパッケージの広い応用余地

半導体部品セラミック材料事業本部は、

  • RFパワー用パッケージ
  • レーザー光源用パッケージ
  • イメージセンサー用ウィンドウ など、気密封止・放熱・小型化に特長をもつセラミック/メタルパッケージ群を展示した。

その中でも、宇宙用途との親和性が高いのが光通信用レーザーパッケージだ。衛星間光通信でレーザーデバイスの需要が高まっており、

  • 熱管理(TEC周辺)
  • 振動耐性
  • 気密封止
  • 長期安定性

など、要求事項が増している。 京セラのパッケージ技術はこれらに対応しており、光通信の量産フェーズで採用候補として位置づけられる。

衛星通信モジュール向けセラミックパッケージ群。 レーザー光源、RFパワーアンプ、イメージセンサー用ウィンドウなど、多層封止技術を紹介。」


■ 結論:三層構造の技術が“宇宙産業の現在地”と合致する

今回の展示から見えてきたのは、京セラの宇宙分野の強みが単発技術ではなく、

  • 材料(ファインセラミックス)
  • 電子部品
  • パッケージ(光通信・RF)

という三層構造の技術体系として整っていることだ。 光通信ミラーや高温構造材、車載ベースの電子部品など、 宇宙用途に求められる「精度・耐環境・量産適性」を複合的に支えられる企業は国内でも限られている。 宇宙産業の設計パラダイムが変わりゆく中で、京セラの技術群は今後さらに存在感を増していく可能性が高い。


■ 参照リンク一覧(本文引用順)

● ISS小型光通信実験装置向け ファインコージライト製ミラー

https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2406/18/news086.html

●世界初、京セラのファインコージライトミラーが 国際宇宙ステーションと地上間の小型光通信実験装置に採用
https://www.kyocera.co.jp/newsroom/news/2024/002462.html

● 京セラ:ファインコージライト技術に関する知財ニュース

https://www.kyocera.co.jp/intellectual-property/news/2025/11-20-196.html

● 京セラ:窒化ケイ素「SN282」SLIM採用リリース

https://www.kyocera.co.jp/newsroom/topics/2024/002501.html

● 京セラのグローバル展開(AVX/Elco買収史)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/inamori/2/1/2_21/_html/-char/ja