“小型化・量産化・民生転用”が加速する日本の宇宙産業

第69回宇宙科学技術連合講演会の展示会場では、日本の宇宙産業がこれまでの「官需中心・一点豪華主義」から、「民需主導・小型化・量産化」へと舵を切りつつある姿が鮮明に現れていた。特に目立ったのは、民生技術の宇宙転用中小企業の存在感の増大、そしてロケット・衛星の低コスト化という3つの大きな潮流である。

パナソニックオペレーショナルエクセレンスの展示だ。同社はパナソニックが車載向けに磨いてきたカメラ技術を超小型衛星に搭載し、実際に ISS から放出された実績を公開した。
?? (写真1:パナソニックの車載カメラ搭載衛星「CURTIS」放出証明書)

車載カメラは量産による高信頼性・低価格を両立しており、LEOコンステレーション時代の衛星バス部品として非常に相性が良い。同展示は、「車載グレード+追加評価」で宇宙用途に十分耐えるという、今後の中間グレード市場の方向性を示していた。

インターステラテクノロジズ(IST)は今回の展示会全体での注目度が非常にかった。展示された大型液体ロケットエンジン「COSMOS V1」は、北海道大樹町の酪農廃棄物から生成したバイオメタン100%を燃料とし、環境性能と地産地消を同時に成立させる挑戦だ。
?? (写真2:ISTの液体ロケットエンジン“COSMOS V1”)

量産型小型ロケットという新市場をにらみ、エンジン内製化と徹底的な低コスト化を進める姿は、日本における“ロケット産業の民生化”を象徴していた。

三菱電機の展示は技術的な厚みを見せた。HTV-XやSLIMなど、これまでの高信頼ミッションを支えた技術資産を基盤にしつつ、量産衛星に適した“車載スペック+α”部品の重要性についても示唆を与えた。
?? (写真3:三菱電機の主要ミッション展示パネル)

「ミルスペックは高く汎用品の100倍といったものもある。車載グレード品などを使いこなすことによって宇宙機器の低コスト化を実現する可能性が高い」という同社の見解は、宇宙産業の今後の方向性を端的に言い表している。

そして、展示会の雰囲気をよく表していたのが中小企業の存在感だ。小野電機製作所は宇宙案件の増加を背景に、精密加工?試作までの一貫対応力をアピール。超小型衛星や大学発プロジェクトの増加により、「少量多品種・短納期試作」が確実に宇宙産業の構造に組み込まれつつあることを示した。
?? (写真4:小野電機製作所の展示パネル)

総じて今回の展示会は、「低価格 × 量産 × 民生技術」へのトレンドが顕著となったことを印象づけた。宇宙産業が従来の官需中心から脱し、電子部品メーカー、精密加工企業、通信キャリア、自動車系メーカーまで巻き込む“多層構造の巨大産業”へと変わり始めている。その変化を如実に映し出した展示会だった。