要点
  • 米宇宙軍の科学次官補ジリアン・バッセイは、2026年5月20日〜21日にワシントンで開催されたAIAA ASCEND 2026会議の参加者に対し、DARPAが概ね高度90〜450kmの間で定義する超低軌道(vLEO)が、意図的に短寿命とした衛星を増殖配置し、30〜90日で事前配置または打ち上げを行える運用形態を通じて、紛争シナリオにおける宇宙軍向けのレジリエントで生残性の高いアーキテクチャ構築に寄与し得ると述べた。
  • バッセイによれば、宇宙軍のコンセプト・技術センターは2027会計年度にvLEOコンセプト開発を計画しており、リンク両端で民生品(COTS)機器を活用できる低出力の直接デバイス通信を含めて、当該軌道の「キラーアプリ」候補を検討中という。
  • 会議で挙げられたvLEOの利点には、より鮮明な画像、より強い信号、より精密な測位、低遅延、より効率的な周波数利用、加えて大気抵抗によりデブリが自然に軌道離脱する「自己浄化」軌道といった性質が含まれる。
  • 一方で、高度維持のための連続推進またはリブースト、材料に対する原子状酸素侵食、安定した二行軌道要素(TLE)に基づく宇宙状況監視を複雑化させる軌道予測性の低下といったトレードオフも示された。
  • RedwireはDARPAのOtterプログラムのプライム契約者として、希薄な周辺空気を燃料として取り込む世界初の空気吸い込み型宇宙機の実証に向けた4,400万ドルのフェーズ2契約を獲得しており、元Lockheed Martinのプログラム・マネジャーが2025年に創業したVaxon Spaceは、ミサイル防衛およびブロードバンド中継を含むデュアルユースvLEO応用を進めている。
  • Aerospace Corporationは最近、Rocket Labとともに「DiskSat」型衛星4機を打ち上げ、今夏に通信およびフェーズドアレイ概念の検討に資するvLEOディップキャンペーンを計画している。
  • 業界パネリストは、vLEOを根本的な物理上の課題というよりも、システムエンジニアリングと経済性の最適化の課題と位置付けており、Redwireは1〜2年のタイムホライズンで数百機規模の需要シグナルを把握していると報告した。
編集部コメント
超低軌道は、高解像度地球観測や高帯域の直接デバイス通信応用に向けて長らく研究されてきた領域であり、大気抵抗、原子状酸素侵食、推進剤あるいは空気吸い込み型推進の要件といった基礎的な物理は十分に特性が把握されている一方、運用フライトプログラムでは十分に取り組まれてこなかった。空気吸い込み型電気推進の概念は欧州やアジアの学術・小規模プログラムで20年以上追求されてきたが、現時点で運用システムは存在しておらず、DARPAのOtterはフライト適格化に向けた注目すべき、しかし未実証の試みと位置付けられる。減耗を前提とするレジリエンス(増殖型短寿命衛星)と高頻度の地球観測の組み合わせは、防衛・商用の双方にとってvLEOを概念的に魅力的なものとするが、その運用経済性は、打ち上げ頻度と低コスト・軽量な空気吸い込み型または電気推進システムの成熟に大きく依存する。宇宙軍がvLEOを近未来の調達ではなく将来のアーキテクチャ選択肢として位置付けていることは、本領域が依然として実験段階にあることを反映している。
参照情報
参照記事
超低軌道(VLEO)、米宇宙軍の有事シナリオで有用と当局者

https://aerospaceamerica.aiaa.org/very-low-earth-orbit-could-help-u-s-space-force-in-a-conflict-scenario-official-says/

参照記事
VLEO、宇宙軍と産業界がデュアルユース活用を検討し勢いを増す

https://aerospaceamerica.aiaa.org/institute/vleo-gains-momentum-as-space-force-industry-weigh-dual-use-potential/