【要点】
・欧州宇宙機関(ESA)は、原子力電気推進宇宙機に関する委託研究「Rocketroll」の結論を公表した。
・本研究では、Tractebel, CNRS, OHB Czech Spaceの3つのコンソーシアムが、それぞれ異なる設計アプローチによる報告書を提出した。
・ESAは、安全性から地上セグメント, 運用, 技術要件までを含む全体像を検討対象にしたとしている。
・Rocketrollは、欧州としての原子力電気推進へのアプローチを検討する研究であり、外惑星ミッションや14日間の月夜を越える必要がある月面ミッションのような高出力需要を背景に実施された。
・設計案では、Ariane 6 heavy-lift rocketに適合する数百kW級から、次世代ロケットで打ち上げる数MW級までの電力レンジが想定されている。
・ESAは、おおむね100kW以下ではsolar-electric propulsionが有利で、それを超える領域でnuclear-electric designが優位になるとの見方を示した。
・各コンソーシアムは、ペイロードと宇宙機本体を別々に打ち上げ、地球軌道上でドッキングして目的地へ向かう構成を想定している。
・ESAは次段階として、nuclear reactor, radiation shield, energy conversion system, thermal heating and cooling system, electric thrustersの各要素について、sub-scale hardwareの製作と試験を監督するworking groupを設けた。

【編集部コメント】

今回の公表は、欧州が原子力電気推進を直ちに実装段階へ移したというより、必要技術と設計選択肢を整理し、研究開発の照準を具体化した点に意味がある。特に、安全性, 熱制御, 電力変換, 推進系を分解して次段階の試験対象へ落とし込んだことで、NEPは概念論から要素技術の積み上げへ一歩進んだといえる。欧州の将来輸送アーキテクチャにおいて、高出力ミッション向けの選択肢を広げる基礎作業として注目される。
【参照情報】
公式リリース
ESA Rocketroll Nuclear-Electric Spacecraft Study
https://www.esa.int/Enabling_Support/Space_Transportation/Future_space_transportation/Rocketroll_nuclear-electric_spacecraft_study
参照記事
Rocketroll opens a new phase of European space exploration
https://karlobag.eu/en/space/how-esa-s-rocketroll-is-paving-the-way-for-european-nuclear-electric-spacecraft-for-the-moon-mars-and-deep-space-uyl0x