【要点】
韓国・ハリム大学春川聖心病院の朴チャンヒョム教授率いる研究チームは、宇宙生物学実験装置「BioCabinet」を自社開発し、第4回ヌリ号打ち上げで軌道投入する計画を進めている。
報道によると、この装置は次世代中型衛星3号を搭載するヌリ号4号機が2025年11月27日に打ち上げられる際に同時搭載される。
BioCabinetはバイオ3Dプリンターと幹細胞分化用インキュベーターを一体化した自律実験プラットフォームで、質量約55キログラム、サイズは790×590×249ミリとされる。
宇宙空間で人工心筋組織を3Dプリントし、その拍動や収縮、薬剤への反応を長期観察することが主な目的である。
初期運用期間は60日間を想定し、細胞の状態に応じて最大1年まで延長可能な設計となっている。
搭載される二つのモジュールのうち一つは、誘導多能性幹細胞から分化させた心筋細胞を用いた心筋組織の形成と挙動を測定する。
もう一つは扁桃由来の幹細胞が宇宙環境下で安定して血管細胞へ分化するかを評価し、将来の血管疾患治療や血管化組織の開発につなげる狙いがある。
ミッションで得られるデータは、低重力下における臓器構築や心血管研究の基盤となり、韓国として初めて宇宙環境での生体組織データを体系的に取得する試みと位置付けられている。
朴教授らは今回の成果を足掛かりに、宇宙空間でのがん薬剤スクリーニングを行う「BioRexs」や人工肝組織研究「BioLiv」など後続プロジェクトも進めている。
教授は、宇宙研究は短期的利益ではなく将来の医療技術創出に資するものであり、本研究を通じて韓国の宇宙バイオ医工学分野の新たな段階を開くと述べている。
【編集部コメント】
宇宙空間でのバイオプリンティングは、長期有人飛行時の医療体制と地上医療の双方に波及効果をもたらし得る分野である。
今回のBioCabinet計画は、自国ロケットと自前の生体実験装置を組み合わせた韓国の宇宙バイオ工学への本格参入の一環と位置付けられる。
iPS細胞由来心筋と扁桃幹細胞による血管研究を同一プラットフォームで行う設計は、将来の臓器再生や創薬の標準モデルとなり得る構成であり、他国研究機関との共同利用やデータ共有の動きにも注目したい。
【出典情報】
公式リリース
Professor Chan Heum Park’s Team at Hallym University Chuncheon Sacred Heart Hospital Sends Their Self-Developed “BioCabinet” to Space Aboard Nuri Rocket:
https://www.prnewswire.com/news-releases/professor-chan-heum-parks-team-at-hallym-university-chuncheon-sacred-heart-hospital-sends-their-self-developed-biocabinet-to-space-aboard-nuri-rocket-302625333.html
参照情報(報道)
BusinessKorea:
https://www.businesskorea.co.kr/news/articleView.html?idxno=257178
3D Printing Industry:
https://3dprintingindustry.com/news/biocabinet-advancing-space-medicine-with-3d-printed-human-tissue-246745/
Astronavi