【要点】

・米航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)は、アルテミスI(Artemis I)で観測されたオリオン(Orion)熱シールドの炭化層損失(char loss:表面が炭化した層の一部が脱落)について、原因を説明した。
・NASAによると、熱防護材アブコート(Avcoat:熱で削れて熱を奪うアブレーター材)内部で生じたガスが十分に排出されず、内圧が上がって亀裂が生じ、外層が不均一に剥離した。
・現象の背景として、アルテミスIで用いたスキップ再突入(skip guidance entry:大気圏に一度入り減速後に上層へ出て再突入する方式)では、2回の「ディップ」の間に加熱率が低下し、熱エネルギーが材料内に蓄積しやすかったと整理した。
・原因特定に向け、飛行データや画像の解析に加え、NASAエイムズ研究センター(NASA Ames Research Center)のアークジェット試験(arc jet:高温気流で再突入加熱を模擬する地上試験)で環境再現を行った。
・NASAは、従来の地上試験が飛行時より高い加熱率で行われていたため、材料の炭化・ガス排出挙動が飛行条件と一致しにくかった点を示し、設備改良で飛行環境の再現性を高めたと述べた。
・アルテミスIは無人だったが、NASAは乗員がいた場合でも安全だったとし、船内温度データは許容範囲内で推移したと説明した。
・アルテミスII(Artemis II)についてNASAは、既に製造済みの熱シールドを用いたまま、再突入の運用(entry operations:飛行経路・手順)を変更して、乗員安全を確保できる合理性を構築できるとした。
・NASAの説明では、将来の月面着陸ミッションの帰還速度に対応するためスキップ再突入は重要だが、アルテミスIIでは「直行再突入」(direct entry:大気圏へ連続的に入って減速する方式)へ寄せる方針を示している。

【編集部コメント】

月帰還の再突入は熱負荷が大きく、オリオン(Orion)は運用で熱環境を調整する設計思想を併用する。NASAは材料挙動の原因特定を踏まえ、アルテミスIIは運用変更で安全を確保しつつ、以後の熱シールド製造改善に反映する流れに位置付けられる。

【出典情報】

公式リリース
NASA Identifies Cause of Artemis I Orion Heat Shield Char Loss
NASA Shares Orion Heat Shield Findings, Updates Artemis Moon Missions
Artemis II: The Orion Spacecraft

参照情報(報道)
WebProNews