【要点】
・米航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)は、アルテミスI(Artemis I)帰還時に確認したオリオン(Orion)熱シールドの想定外の損耗について、原因と対策の方針を公表した。
・現象は、アブコート(Avcoat)と呼ぶアブレーター材(Ablator:加熱で表面が削れ熱を逃がす熱防護材)内部で発生したガスが十分に排出されず、圧力上昇により表層近傍に亀裂が生じ、一部が不均一に剥離したことが原因と説明した。
・アルテミスI(Artemis I)ではスキップ再突入(Skip entry:大気へ一度入り減速後に一時的に大気圏外へ戻り、再度再突入する方式)を用い、その間の加熱環境が材料内部の熱・ガス挙動に影響したとした。
・NASAは、エイムズ研究センター(Ames Research Center)のアークジェット(Arc-jet:プラズマ流で再突入加熱を模擬する地上試験設備)などで飛行環境の再現試験を行い、現象の再現と原因の特定に用いた。
・アルテミスII(Artemis II)では、既に機体に取り付け済みの熱シールドを使用しつつ、再突入時の飛行(軌道)を変更して、問題が起きた温度域に滞在する時間を短縮する運用でリスクを低減するとした。
・NASAは、月からの帰還時に発生する約5,000華氏(約2,760℃)規模の加熱から乗員を守る熱防護系としてアブコート(Avcoat)を位置付け、運用変更によりアルテミスIIの安全確保が可能と説明した。
・NASAはアルテミスII(Artemis II)を2026年4月目標とし、リード・ワイズマン(Reid Wiseman)、ビクター・グローバー(Victor Glover)、クリスティーナ・コーク(Christina Koch)、ジェレミー・ハンセン(Jeremy Hansen)が搭乗するとした。
・NASAは、後続のアルテミスIII(Artemis III)以降に向け、熱シールド製造の均一性と透過性(Permeability:ガスが抜ける性質)を確保するための改善も進めると述べた。
【編集部コメント】
アルテミス計画の有人飛行再開に直結する熱防護の課題に対し、設計刷新ではなく再突入運用の変更で安全余裕を確保する方針を示した。同時に、後続ミッションでは製造面の改善で恒久対策を進める二段構えとして位置付けられる。
【出典情報】
公式リリース
NASA Shares Orion Heat Shield Findings, Updates Artemis Moon Missions
NASA Identifies Cause of Artemis I Orion Heat Shield Char Loss
参照情報(報道)
The Wall Street Journal
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