【要点】

・欧州委員会のアンドリュス・クビリウス(Andrius Kubilius)防衛・宇宙担当委員は、第18回欧州宇宙会議において、EU独自の衛星コンステレーション「IRIS²(アイリス・スクエア)」の初期サービス開始が2029年になる見通しを明らかにした。
・IRIS²は低軌道(LEO)および中軌道(MEO)を中心に、約290機規模を想定した衛星群で構成され、政府・軍向けの安全な暗号化通信と、民間向けのブロードバンド接続を提供する計画である。
・同プロジェクトは当初2030年の本格稼働が見込まれていたが、地政学的緊張の高まりを受け、スケジュールを前倒し(加速)させる方針が示された。
・これに先立ち、EU加盟各国の既存衛星通信能力を統合利用する「GOVSATCOM」ハブの運用が正式に開始されたことが発表された。
・クビリウス委員は、ロシアの脅威や米スペースX社の「Starlink」への依存脱却を挙げ、欧州の「宇宙主権」と「戦略的自律性」の確立が急務であると強調した。
・IRIS²の開発・運用は、欧州の衛星大手SES、Eutelsat、Hispasatなどが主導するコンソーシアム「SpaceRISE」が担当し、総事業費は約106億ユーロ(約1.7兆円)規模となる。

【編集部コメント】

「2030年」とされていた目標が「2029年」に修正された背景には、ウクライナ情勢やトランプ政権下の米国との関係など、安全保障上の切迫感がある。
特にクビリウス委員が「戦争が迫っているという懸念」に言及し、スターリンクへの依存をリスクと明言した点は重い。
GOVSATCOMによる「既存資産のプール」で当面を凌ぎつつ、2029年の自前インフラ完成を急ぐEUの「自律への焦り」が色濃く反映された発表といえる。

【出典情報】

公式リリース(欧州委員会)
Opening Address by Commissioner Kubilius at the 18th European Space Conference
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/speech_26_228

参照情報(報道)
IRIS2: EU’s Space Ambitions Set to Launch by 2029 (DevDiscourse)
https://www.devdiscourse.com/article/technology/3782843-iris2-eus-space-ambitions-set-to-launch-by-2029

EU governments’ satellite comms programme lifts off (Euractiv)
https://www.euractiv.com/news/eu-governments-satellite-comms-programme-lifts-off/