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衛星ブロードバンドは、固定回線から海上・航空・スマホ直接通信へ広がる
ASTRONAVI 編集部コラム / 2026年6月24日
ウクライナの戦場では、海上ドローンの制御に米SpaceXの衛星通信「Starlink」が使われ、近年はロシアも入手した端末を自軍のドローンに転用している。交戦する双方が、結果として同じ一民間企業の通信網に依存し、その可用性は企業の判断で遠隔から制限されうる。初期の海上ドローン作戦では、実際にSpaceXが端末を遮断して作戦が中断したと伝えられている。
これは、Starlinkがもはや「家庭向けの衛星インターネット」では捉えきれない存在になったことを象徴している。Starlinkは、低軌道衛星ブロードバンドを軸に、固定・法人・可搬・船舶・航空・スマホ直接通信・政府向けへと広がる通信プラットフォームである。本サマリでは、その全体像を手短に整理する。

3つの要点
① 中核は専用アンテナを使う衛星ブロードバンド。数百Mbps級・低遅延で、スマホ直接通信が本筋ではない。
② 移動体で実用化が進むのは海上・航空。日本ではJAL系のZIPAIRが全機Starlinkを搭載(アジア初)。
③ 注目のDirect to Cell(=Starlink Mobile)は派生サービス。1ビーム数Mbps・テキスト中心の「圏外のお守り」。

サービスの全体像
Starlinkは大きく3つに分かれる。中核となる衛星ブロードバンド(Home/Business/Roam)、専用端末を使う移動体向け(Land Mobility/Maritime/Aviation)、そして派生・政府向け(Direct to Cell/Starshield)である。スマートフォン直接通信は注目度が高いが、Starlink全体の本筋ではなく、圏外を補う派生サービスと見るのが正確だ。
通信性能は「桁」が違う
同じStarlinkでも、専用アンテナの固定・移動体ブロードバンドと、スマホ直接通信では性能がまったく異なる。
※ 速度は時間帯・混雑・場所・プランで変動する目安。LEO各サービスの遅延は概ね20〜40ms。Direct to Cellは固定ブロードバンドより1〜2桁低い水準で、携帯回線の置き換えではなく圏外の補完にとどまる。
国別の濃淡
固定ブロードバンドは日本を含め多くの国で提供されている。スマホ直接通信は、日本=KDDI(au Starlink Direct)、米国=T-Mobile、ニュージーランド=One NZ、カナダ=Rogers、そして英国=Virgin Media O2(欧州初の商用化)と、提携キャリアごとに広がる。一方、陸上車両の「走行中」利用は、国・地域ごとの認可制約が大きい。
競合は用途ごとに別物
固定・法人ではViasat、Eutelsat OneWeb、Amazon Leo。海上・航空ではViasat(旧Inmarsat)やSES(旧Intelsat)。スマホ直接通信ではAST SpaceMobile、Lynk Global、Globalstar、Iridium。Starlinkは単独の「衛星インターネット」ではなく、複数市場にまたがる通信プラットフォームとして競合と向き合っている。
デュアルユースと単一プロバイダー依存
冒頭のとおり、Starlinkは戦場でも通信基盤として使われ、近年は交戦する双方が同じ通信網に依存する状況も生まれている。本質的なのは、その可用性が一民間企業によって遠隔から左右されうる点である。単一の事業者に依存する通信インフラは、可用性そのものを握られるリスクをはらむ。本サマリでは軍事利用の詳細には踏み込まず、インフラ依存の含意を指摘するにとどめる。
まとめ:Starlinkは「家庭用ネット回線」でも「スマホ直接通信」でもなく、固定・可搬・海上・航空・政府・スマホ直接通信を横断する低軌道衛星通信プラットフォームである。詳細レポートはこちら(会員限定です)
本稿は、各社・各機関の公開情報および報道をもとにASTRONAVI編集部が整理したものです。サービスの提供状況・対応端末・料金・各国の制度は変更される可能性があり、最新かつ確定の情報は各社公式発表をご確認ください。本稿は特定の銘柄・サービスの投資や購入を推奨するものではなく、投資・購入の判断は読者ご自身の責任で行ってください。
出典:Starlink/SpaceX、KDDI、One NZ、Rogers、T-Mobile、Virgin Media O2、ZIPAIR ほか各社公開情報。企業統合:Inmarsat→Viasat(2023年)、Intelsat→SES(2025年7月)、Project Kuiper→Amazon Leo(2025年11月)。(2026年6月時点)